| スーダンの水事情 (その実態に迫る) |
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(株)地球システム科学 上村三郎 (技術士:応用理学) |
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22.スーダンのミネラルウォーター
22-1.はじめに
スーダンでは数多くのミネラルウォーターが製造販売されています。例えば私たちが勤務している国営水公社はスーダンの飲料水に関する責任機関ですが、職場には大容量のミネラルウォーターの給水機が設置されている他、会議には必ずペットボトルのミネラルウォーターが出されます。しかしながら、一見して安全そうなミネラルウォーターですが様々な課題を抱えているのも事実です。この章ではスーダンのミネラルウォーターの現状について報告します。 22-2.急激なミネラルウォーターの普及
私が最初にスーダンに入国した1987年当時において、スーダン製のミネラルウォーターは殆ど製造販売されていませんでした。その後、2008年に再びスーダンに着任した私はミネラルウォーターが店頭で数多く販売されていることに驚きました。これはハルツームのような都市部のみならず、地方においても同様であり、これによって外国人が非衛生な飲料水を摂取する割合は大幅に削減されました。 それでは何故ここまでスーダンでミネラルウォーターが普及したのでしょうか。まず水道水の水質の問題が考えられます。特に、7月から9月の雨季における青ナイル川の原水の濁度は10,000 NTUを超し、この川から取水している都市部の浄水場は濁度をスーダンの飲料水の水質基準である5 NTUまで削減する事ができません(スーダンの主要都市は青ナイル川から取水しています)。その結果、水道水は雨季の期間中は無色透明とはならず、常に着色し、市民は飲用を避けることになります。 次に、ミネラルウォーター普及の背景として頻発する断水が考えられます。この断水問題は深刻であり、ハルツーム市内では日常的に道路が水道管の破損で閉鎖され、漏水工事が実施されていますが、水道管の破裂から修復までには長時間を要しています。 以上がミネラルウォーター普及の主な背景ですが、国民の衛生意識の高まりと所得の向上も見逃すことのできない要因です。なぜならば、貧しい人たちは濁度が高くて、断水が多くても決してミネラルウォーターを利用出来ないからです。
22-3.スーダンのミネラルウォーターの特徴
私はこれまでスーダンのミネラルウォーターを購入するたびにペットボトルに表示してある水質分析結果をコンピューターに入力してきました。そして、その数は2011年3月11日時点で13銘柄になりました。ここでは、スーダンで販売されているミネラルウォーターの特徴を整理します。 (1) スーダンには80社のミネラルウォーター製造会社が登録されていると言われているが、国際基準を満たす製造をしている会社は5社程度である。 (2) ミネラルウォーターの容器は最大が19ℓであり、この水は最初に30 SDGを支払えば次から8 SDGで購入できる。つまり、この容器は完全にリサイクルされている。 (3) しかしながら、ペットボトルで販売されている1.5ℓ、1ℓ、700mℓ、600mℓ、300mℓ、250mℓ、150mℓの容器は薄いプラスティック製であり、飲用後はゴミとなる。また、価格は600mℓで0.5 SDG程度である。 (4) スーダンのミネラルウォーターの各社の水質基準は統一したものが無く、しかも分析項目は各メーカーの独自な判断に任されていることから比較しにくい。ただし、スーダンではミネラルウォーターに対する国の基準は存在する。 (5) 表示されている水質分析のラベルは非常に小さな文字で記載されており、専門家や関心がある人以外は理解できない。しかも、分析したデータは最新の水質分析結果を反映したものではなく、いつの時点での結果か不明である。 (6) 店頭で販売されているミネラルウォーターは冷蔵庫に保管されているものを除けば直射日光が当たる店頭に並べられており、紫外線や高温による水質の変化を気にかけていない。 表22-1.スーダンの代表的なミネラルウォーターの水質分析結果
22-4.乱立する製造会社
スーダンには80社のミネラルウォーター製造会社が登録されています。ただし、これらの内、既に9社は製造を中止していることから現在も稼働している会社は71社となります。また、最も古い製造会社は1954年に設立されたMineral Water社となっています。 これまでに登録されている80社スーダンのミネラルウォーター製造会社の内、全体の82%に相当する66社はハルツーム州に立地しています。これ以外の州としては、エル・ゲジーラ州、紅海州及び北部州にそれぞれ3社が、また、白ナイル州に2社、ナイル州と北コルドファン州に1社が立地しています。全体の82%がハルツーム州に立地している背景としてはハルツームが最大のミネラルウォーターの消費地であることによります。 一方で、ミネラルウォーター製造会社の創業開始年に着目すると、2000年代に全体の68%に相当する55社が製造を開始しています。その次に1990年代が多くなり12社が操業しています。このようにスーダンのミネラルウォーター製造会社は1990年代から2010年の20年間に操業を開始していることが分かります。
図22-1.ミネラルウォーター製造会社の創業開始年代
一方で、スーダンではミネラルウォーターの品質に関する数多くの苦情が出されていました。具体的には、@容器の中に浮遊物が時々見られる、A水質分析表示が小さすぎて判りにくい、B表示された分析値がいつの時点のものか不明である、C水道水をそのままミネラルウォーターとして販売している疑惑がある等でした。この問題を解決するために、スーダン政府は国営水公社の研修センター(PWCT)に水質管理の業務を委託しました。これを受けて、PWCTは登録されている全てのミネラルウォーター製造会社を訪問し、様々な聞き取り調査や製造工程を調査しています。私達専門家も1日だけですが、スーダンを代表する「Soba」社と「Al Wabil」社を訪問しました。これらの2社は近代的な工場を建設しており、最新の機材でミネラルウォーターを製造していました。両社ともにオゾン処理を実施しており、「Soba」社はフランス製、「Al Wabil」社は中国製の機材でミネラルウォーターを製造していました。 近年スーダンにおいては「臭素酸」の含有がミネラルウォーターの大きな問題として取り上げつつあります。スーダンのミネラルウォーターの殆どは地下水を原水として利用しています。スーダンの地下水の塩分濃度は比較的高く、その結果地下水には臭素が含まれております。また、殺菌のためのオゾン処理工程において臭素酸が生成されるものと推定されています。臭素酸は発がん性物質であり、現在国の検査体制と各工場の製造工程の改善が大きな課題となっており、その改善が求められています。 スーダンのミネラルウォーターは今後メーカーに対して厳しい水質管理が義務付けられ、品質を維持できる会社のみが生き残ることでしょう。逆に問題のある弱小会社が淘汰されるものの、これは消費者にとっては好ましいことであり、今後消費者は統一された水質表示がなされた安全なミネラルウォーターを飲むことができるでしょう。
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