モロッコの水物語
(その実態に迫る)
元JICA専門家 上村三郎 (技術士)

6.水使用とその課題

6-1.水使用量と地域格差

  日本や他の先進国において、都市部と地方部で1日あたりの給水原単位(ℓ//日)が大きく異なることはなく、逆に地方部の方が広い庭や数台の車両の洗車によって多量の水を使用している場合もある。これに対して、途上国では、将に水の消費量と快適な近代化の指数(所得、上級学校への就学率、各種電化製品の普及率等)が一致しており、モロッコもその例外ではない。

2005年末に実施したアンチアトラス地域の130村落の現況調査においては、給水原単位(ℓ//日)はモロッコ側が国家目標としている20ℓを越えている村落は僅か14村落しかなく、平均値は13.2ℓとなっていた。モロッコの都市部では既に150ℓを超えており、この水使用量の格差は非常に大きなものがある。しかしながら、現地での聞き取り調査によれば、地方村落部ではそもそも限られた水資源を無駄に使用する習慣が無いこと、また、水源が枯渇しないように、雨季に貯水したMatefia(雨水貯水槽)の水や自家用の井戸を活用するなどして大切な共同水源の有効活用及び延命を図っていることが判明した。また、3村落おいて50ℓを超過しているが、これらの村落ではいずれも家畜用として飲料水を使用していたことから、これらは例外として取り扱った。


-14.アンチアトラス地域における1日当たりの水使用量


モロッコにおける都市部と村落部の水使用量の格差に関しては、私の家の水使用量からある程度の推定ができるであろう。ラバトにある私のマンションの1ヶ月の平均的な水使用量は21㎥であり、これを家内と2人で使用していることから、私の家では一人1350ℓの水を使用していることになる。これは上記アンチアトラス地域の平均的な水使用量の26.5倍に相当しており、都会の住民の水使用量がいかに多量であるかを示唆するデータである。



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