モロッコの水物語 (その実態に迫る) |
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元JICA専門家 上村三郎 (技術士) | |||||
5-2.ダムの建設適地 モロッコの地質構造はアフリカ大陸がユーラシア大陸と衝突した際に、古地中海に堆積していた海底堆積物が隆起し、北東から南東にかけてアトラス山脈が形成された。その結果、比較的軟弱な泥岩層は侵食が進み、硬い砂岩層や石灰岩層が残り、雄大な景観をかもし出している。このような地形や地質はダムの建設を考えた場合には、非常に有効な貯水を確保できる条件となっているが、乾燥化が進み、殆ど森林が消滅した現状においては、河川とは名ばかりであり、表流水のない広大な河川敷だけが広がっている。 | |||||
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一方、Tata地方で表流水が年間を通して確認できる河川は非常に限られており、その中の代表的な川がDra川支流のTissnit川である。しかしながら、この恵まれた水量を有する川には水質的な問題があり、塩分濃度が0.36%(一般的な地下水は0.02%以下、ちなみに海水は3.56%)と非常に高くなっているのである。また、下流域は塩分に強いナツメヤシが栽培されているものの、その農地には塩類集積が見られることから、長期的には農地が消滅する可能性が高い。仮に、この場所にダムを建設すれば確実に貯水されるであろう。しかしながら、原水の塩分濃度が高いことから、これを除去する脱塩装置が必要であり、仮にこの方法で飲料水や農業用水を供給しても経済効率が悪く、利用者は限定されるであろう。 | |||||
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モロッコにはダムの建設適地が数多く分布しているものの、その場所が乾燥地、あるいは水質的に問題がある等必ずしも条件が揃っているわけではない。その結果、特定の流域にダムが集中することになり、その代表がSebou川やOum Er Rbia川である。この2河川流域でモロッコ全体の50%近くの水需要を賄っている現状は、可なり河川や流域の負担を重くしているといえるであろう。それでも、確実な水源を確保するにはこの流域に今後も依存せざるを得ないのがモロッコの現状である。 | |||||
図 -12.流域別のダムの個数と水利用の割合 |
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