地球システム科学

【プロジェクト】ホンジュラス国首都圏地滑り防止計画地滑り対策工事

JICA国際協力機構 無償資金協力プロジェクト

災害に脆弱な国土と厳しい経済状況

 中米地域のほぼ中央に位置するホンジュラス国では、1998年のハリケーン・ミッチの停滞による土砂災害や水害によって、2万人を超える死傷者を出す大災害が発生しました。同国は被災後直ちに『国家再建計画(PMRTN)』を策定し、復興と経済構造の改革を図りましたが、復興プロセスは終了したものの、中南米ではもっとも開発の遅れた国家の一つであることから、国際社会からの経済支援が必要となっています。
 同国の首都テグシガルパ市は、盆地に発展した都市であり、周囲を傾斜地に囲まれているため、降雨等による洪水・地すべりの自然災害による被害を受けやすい特性があります。また、同市周辺では地方からの人口流入が顕著になっており、流入者の多くは地形的にも極めて危険な地域に居住せざるを得ません。さらに、自然災害対策のためのインフラ整備が進んでいないことから、首都圏周辺のいくつかの地域では小規模な降雨でも洪水や地すべりが繰り返し発生しています。

 ホンジュラス国政府およびテグシガルパ市は、こうした自然災害に対する首都圏の脆弱性は十分に理解しているものの、その対策のための予算確保もままならず、河川の清掃程度の小規模の対策を講じる程度で、本格的な災害対策には着手できていません。


繰り返される大災害に備えて

 このような背景を通じて、わが国はハリケーン・ミッチによる甚大な被害を被ったホンジュラス国の災害復興支援の一環として2001年~2002年に「首都圏洪水・地すべり対策計画調査」を実施し、ハリケーン後のテグシガルパ市の防災対策にかかるマスタープランを作成しました。また、同開発調査において、優先プロジェクトとして特に洪水や地すべりの危険性の高い地域が特定され、早急に対応策を講じる必要があることが提言されました。

 ホンジュラス国政府は、この提言を受け、もっとも地すべりの危険性の高いとされた3地域について、わが国に無償資金協力を要請しました。ここで紹介するプロジェクトは、一連の調査、設計、工事を含む防災対策事業であり、2008年の準備調査開始から、政変による一時中断があったものの、実施設計業務を経て、現時点では本格工事の施工に至っています。


本格的な地すべり対策工事

 採用された地すべり対策工法は主として地下水排除工を主体とした抑制工に相当するものです。抑制工とは、地すべりの発生要因を取り除くことによって活動を沈静化させるものであり、活動の主要因となる地下水位を低下させたり、不安定な地形を改変して活動域のバランスを安定化させるという工事をおこないます。
 日本においても大規模な地すべり地を中心に抑制工が広く用いられており、今回採用される集水井工は地すべり地内に直径3.5m、深度10~25mの井筒を複数配置しその内部から横方向の水抜きボーリングを打設して積極的に地下水を排除するものです。

 このような工法が中南米の途上国で採用されることは初めてのケースであり、初の本格的な地すべり対策工事といえます。専用の工事材料や工事機械を日本から持ち込んで施工しますが、ホンジュラス国の政府・自治体職員や民間の施工会社や設計コンサルがこの工法の原理を知り施工方法を実際に見ることによって、同国の防災レベルが向上することが期待されます。