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モロッコ水物語

水使用とその課題-節水と漏水

  モロッコのような乾燥地あるいは半乾燥地が卓越する国々での水資源開発は常に国家の重要プロジェクトとして位置付けられる。オイルダラーに恵まれ海水の淡水化プラントを有する湾岸諸国を除き、多くの北アフリカあるいは中近東諸国における水資源開発の主体はダムの建設であり、モロッコもその例外ではない。そして、莫大な金額と時間及び労力をかけてダムが完成するとそこから農業用水や飲料水が供給され、人々の生活はより豊かで快適なものとなってゆくのである。当然のことながら、政府や水資源開発あるいは水供給機関は国民に節水を促す啓蒙用パンフレットを配布し、水資源が極めて重要で有限のものであることを大々的に広報する。例えば、モロッコを代表する海岸のリゾート地であるアガディールのホテルの洗面台には、①3分間蛇口を開ければ18ℓの水が使用される、②バスタブはシャワーの10倍の水を消費する、③綺麗なタオルを洗濯しないと記載されている。

図-15 .節水を訴えるパンフレット

以上のような標語がアラビア語、フランス語、英語、スペイン語 及びドイツ語の5ヶ国語で書かれていることから、これは一般のモロッコ人よりも大量に水を消費 する観光客用に作成されたものであろう。しかしながら、水を大量に使用する生活に慣れた観光客がどこまでパンフレット の内容を理解し、節水に努めてくれるかどうかその効果は不明である。

一方で水資源開発の実施機関である水利庁の洗面所では蛇口のパッキンの不具合から毎日かなりの量が流出していているがそのことを特別気にしているモロッコ人は少ない。目測ではこの蛇口の漏水は1ℓ/分程度であり、1時間に60ℓ、1日に1440ℓも無駄に流れる計算となる。これは蛇口のゴムパッキンの材質が悪く、交換すべき時期を迎えているだけであるが誰もこの問題を解決しようとは考えていない。また、マラケシュなどの観光地には長期滞在者用の家具付アパートが数多く存在するが、深夜静かに耳を澄まして建物の様々な音を聞いてみると常にどこからか水が漏水している音が聞こえてくる。同時にトイレの音は睡眠を度々妨害する元凶でもある。

モロッコのトイレは大小に便に関係なく、15ℓが毎回流される。この水は飲料水と同じ水質であり、水資源に恵まれていないモロッコ人がトイレの排水に無頓着となっていることは気がかりなことである。日本では目下6ℓの水で流せるトイレが開発されている。とかく、途上国では水資源の開発を国策として重視する傾向が見受けられる。しかしながら、モロッコのようにある程度水資源が開発され、都市部に安定した飲料水が供給されている国においてさえ、水資源を開発した後の節水教育や啓蒙活動及び漏水対策は不十分な状態である。大量の漏水やトイレ用水の削減とその技術こそ水資源に恵まれない途上国に早く定着普及させことが今後益々重要である。

写真-30.水利庁の洗面所の漏水(左)とモロッコの標準的な15ℓ用トイレ(右)

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