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スーダンの水事情

地方と都市の水事情-都市給水

スーダンの首都を有するハルツーム州は面積2.23万km²、人口約620万人(2008年推計値)の州である。人口密度でいえば、広島県の339人/km²よりやや少ない程度である。
ハルツームはスーダン最大の都市とはいえ、その大部分が乾燥地であり、水道用水源としては、そのほとんどをナイル川(青ナイル、白ナイルを含む)に依存している。ハルツーム市内を歩けば、ロバや羊の群れに出会うのどかな風景が広がる一方で、外国資本のスーパーマーケットやホテル、商業ビルが点在しており、先進国的な部分と開発途上の伝統が色濃く残る国であるということを痛感させられる。本章ではハルツームを事例としてスーダンの都市給水の現状を述べる。

3-2-1. ハルツーム市の水源

ハルツーム市の水道用水源は、そのほとんどをナイル川に依存している。ナイル川は年間を通じて、ハルツーム市内の全人口に給水するための十分な流量を確保することができるが、水質の面では雨季の期間中に濁度が数万NTUに及ぶ問題を抱えている。ハルツーム市内の蛇口から給水される水も、この濁度を十分に処理することができておらず、雨季のピークである8月には、かなり濁った水が蛇口から出る。ただし、ハルツームに住む人々は平気でこの水道水を口にしており、気にしているのは衛生意識の高い外国人だけであろう。聞き取り調査によれば、近年は水道水による目立った健康被害の報告もされてない。

写真2.2009 年に完成した最新設備を誇るソバ浄水場

写真3.ミネラルウォーター(左)、水道水(右)

3-2-2. 都市給水システムについて

ハルツーム市には現在7ヶ所の浄水場が存在し、それぞれの浄水場から担当給水区域に対して送水を行っている。総造水量は年間約75万m³、給水対象人口は約460万人である。都市部での給水方法としては日本と同じ各戸給水(フル・プランニング)という方法がとられているが、地方部では公共水栓による給水が主流のため、州全体としては各戸給水の普及率は約3割にとどまっている。また、スーダンの国家25ヶ年給水計画によれば、都市部では1人1日当り150ℓの給水量の確保を目指している。日本の1人1日当り平均給水量は約250~400ℓと言われており、この量は、比較的日本に近い給水量を目指していると考えられる。これは他のアフリカ諸国の現状から考えると極めて恵まれており、その要因はナイルの賜物と言える。

一方で、各戸への引込管には水道メータが設置されておらず、料金システムとしては、その給水家屋の規模に応じた3段階(1級~3級)の定額制が採用されている。そのため、使用者に「節水」の概念はあまり定着しておらず、庭や道路等への散水も蛇口を開けたまま長時間放置する様子をしばしば見ることがある。ナイル川の流量は豊富だが、浄水処理に多額の費用が必要とされることを考えれば、今後は、水道メータ使用による従量制に移行し、住民の「節水」意識の向上が望まれている。

3-2-3. 水道管の材料

写真4. 炎天下に露出保管される中国製の水道管

使用されている水道管は、主に石綿セメント管(約20%)、塩化ビニル管(約30%)などであり、石綿セメント管の使用には、その耐久性、人体への影響等の面で問題があることが水道関係者の間では知られている。そのため、他の管種(高密度ポリエチレン管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管など)への早急な交換が望まれているが、現状は予算等の問題からあまり進展していない(ただし、2009年より中国のローンプロジェクトで大量の樹脂製パイプが調達されている)。また、スーダンで普及している管材は主に中国製であり、その品質には問題があると指摘されている。さらに、炎天下に樹脂製の水道管を露出保管する等、品質管理の概念自体が希薄であることも問題の一つである。

3-2-4. 漏水管理について

写真5.ハルツーム市内での漏水の様子

水道管の品質、また施工業者の技術力に問題があること等に起因して、ハルツーム市内では漏水が頻繁に見受けられる。特に未舗装の道路においては、乾季にもかかわらず、時々、道路わきに大きな水たまりが発生する。ハルツーム州水公社では、漏水が確認された個所から、随時応急処置を施しているが、漏水には復元性があり、根本的な対策には至っていない。また、各戸に水道メータが設置されていないため、実際の水道使用量を把握することができず、漏水で失われた水量の正確な把握もできていない状況である。

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