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モロッコ水物語

伝統的取水施設-人力掘削井戸

モロッコの伝統的な井戸の特徴としては、人力掘削(手堀)、大口径(標準規格1.6m)開放式ツルベ井戸となっていることである。ただし、掘削前の探査方法が非常にユニークであり、現在でも木の枝を利用した方法で場所を特定する専門の占い師がいる。占い師は神妙な顔をして、最も適切な場所を選定する必要があり、その根拠として木の枝が大きく振動するポイントを掘削地点とするらしいしいが、この方法にどれ程科学的な根拠があるかは不明である。

井戸の掘削方法には伝統的な人力掘削と機械掘削の2種類があり、モロッコの村落部では人力掘削が主流である。日本がこれまで実施してきた地方飲料水供給計画の対象井戸のほぼ90%は3人でチームを組み、井戸元にドラム(滑車)とロープを取る付け、一人の職人が井戸に入りツルハシとスコップで直接掘削した大口径の井戸であった。

これまで調査してきた人力掘削井戸の平均的な深度は30mであり、最大は70mの井戸も建設されていた。しかしながら、ツルハシとスコップでの掘削は30mが限界であり、それ以上の深度になるとエアーコンプレッサーと削岩機を使用する。また、途中で削岩機でも困難な岩盤が露出すると、火薬を設置し、爆破する方法もある。井戸職人からの聞き取りによれば、20m程度の深度でも、井戸底から見上げた地上部の口径は、満月程度の大きさであり、また、上空を見上げれば、日中でも星が見えるそうである。

伝統的な井戸の建設作業で注意しなければならないのは、酸素が急激に無くなる酸欠現象である。これに対する井戸職人達の対応方法は、ロウソクを灯して酸素の有無を確認することである。また、落盤事故に対しては、多くの対象井戸が岩盤地帯にあるためにあまり心配していないようである。ちなみに、これ程危険な井戸掘削の費用は1m当たり、3,000DH(約4万円)が相場であり、50mの井戸では150,000DH(約200万円)となる。これに対して、機械掘削の井戸は1m当たり1,000DHが平均となっている。人力掘削の井戸が機械掘削と比べて高額になる理由は、井戸口径が大きくその分作業量が多くなることと危険な作業であることによる。

モロッコは日本と比べて降水量が少なく、しかも地下水が貯留しやすい沖積層が発達しにくい地質環境にあり、このように制約された自然環境下のモロッコで、安定した水源を地下水に求めることには自ずと限界がある。しかしながら、厳しい自然状況にありながらも、能力の高い井戸が確実に存在しているのも事実であり、これらの井戸を今後詳細に調査して行く事もモロッコの水資源開発とその後の地方飲料水供給計画にとっては重要と考えられる。

写真-24.伝統的な井戸の掘削現場と井戸内部の様子

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